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『タイタニック』を貶(けな)せば映画通?
〜ハリウッド映画を否定する人々〜 |
“映画通”を自認する人の中に、なぜかハリウッド映画を毛嫌いする方々が多くいらっしゃいます。
そういう方たちによく槍玉に挙げられるのが、かの大ヒット作『タイタニック』。なるほどいかにも“ハリウッド的”な作品ですね。中にはもう親の仇のように微に入り細に入りこと細かくこき下ろしている批評などを目にすることもありますが、あんたいったい何回観たんだと突っ込みたくなります(笑)。まあ私もあの作品を最高傑作とまでは思いませんが、劇場で通常料金を払って観る価値は十分ある作品だと思いましたよ。パニック映画と観るか恋愛映画と観るかで評価は違ってくるでしょうが、パニック映画大好きの私としてはあの沈没シーンだけで十分堪能させていただきました。同じ沈没映画の名作『ポセイドン・アドベンチャー』には遠く及ばないとは思いましたが、まず水準以上の作品ではあっただろうと考えます。
『タイタニック』が駄作扱いされがちなのは、やはり有名税というところでしょうか。何事もメジャーになればなるほどアンチも増えるもの。これこそまさに“ハリウッド嫌い”の根幹ではないでしょうか。「アカデミー賞受賞」の肩書きに嫌悪感を示す方もいらっしゃるようです。反権威主義、反米精神、そしてマニア特有のマイナー嗜好。それらがないまぜとなってハリウッド否定論に結びついているように思えるのです。
そうしたハリウッド否定論者の主張としてよく聞かされるのが、「金をかければ面白いものが出来て当たり前」。…予算に比例して面白い作品が出来るのなら、たっぷりかければいいと思いますけど?巨額の予算を投じた大作映画も低予算映画も、観る側が支払う料金は同じです。たとえば大衆食堂に入って昼定食を注文したら不味かった、けど隣の高級レストランの美味しいランチと値段は同じ、そんな時に「仕入れてる食材が違うんだからしゃーないな」で納得できるでしょうか。
もちろん作品の質が予算に比例するなんてことはありません。“いかにもハリウッド的”と形容される巨費を投じた大作映画に退屈な作品があることは事実ですが、ハリウッド映画にも低予算で撮られた良質の作品はいくらでもあります。アカデミー作品賞を受賞した『ドライビング
Miss デイジー』などはその低予算ぶりが話題になりましたね。『俺たちに明日はない』『ペーパー・ムーン』といったロードムービーの名作もおそらく大して製作費はかかっていないはず。ハリウッド映画=大作主義なんてイメージがあるようですが、なるほど『タイタニック』や『キング・コング』のように、1本の作品に数億ドルの製作費をかけるなんてハリウッドメジャーにしか出来ない芸当でしょう。けれどそんな作品がいったい年に何本作られてるでしょうか?そうした巨額の予算をかけた作品は宣伝費も大きく、メディアへの露出度も高いのでより目立つだけのことですね。『十戒』や『ベン・ハー』といったスペクタクル史劇を低予算で撮るわけにもいかないでしょう。予算をかけるべき作品にはたっぷりかける。それが出来るのがハリウッド、ということではないでしょうか。
ただ1本あたりの製作費が、邦画に比べるとハリウッド映画が平均して高いのは疑いようのない事実。けれどハリウッド映画は製作費も桁違いだけど、そもそも俳優一人ひとりのギャラが桁違い。最近、女優リース・ウィザースプーンの新作への出演料が2900万ドル(約34億円)に達し、ジュリア・ロバーツの記録を抜いて歴代女優トップに立ったと話題になってました。邦画だと超大作レベルの総製作費に相当する額を一人で持ってくわけですね。日本の俳優の相場はよく知りませんが、1本あたり1億を超える人はおそらくいないでしょう。ですのでハリウッドと同じような水準の映像でも、日本だとはるかに少ない予算で撮れるはずなのです。『デビルマン』の20数億という製作費はいったいどこに使われたのでしょうか。かと思えば邦画のある作品では、「製作費が安い」ことを宣伝コピーに使ってたこともありました。自虐ネタでしょうか。低予算映画をやたらと褒めたがる“映画通”の方もいらっしゃいますね。「低予算だけどいい映画」はあっても、「低予算だからいい映画」となっては本末転倒だと思うのです。
ヨーロッパ映画との比較で言うと、ヨーロッパ=芸術指向、ハリウッド=商業主義というイメージが定着してますね。「商業映画」という言葉は、しばしば侮蔑的なニュアンスを伴って使われがちです。けれど商業映画ではない映画って何なのでしょう?一般公開を目的としない教育映画や記録フィルムの類しか思い浮かびませんが。「芸術性が高い」と評価される作品にしたって、第一の目的はカンヌ映画祭でパルムドールを取ることではなく、まず何より興行的に成功させることでしょう。賞さえ貰えれば客の入りなんて知ったこっちゃない、なんて監督がいたら製作会社としてもたまったもんじゃありませんね。映画は基本的に「大衆娯楽」であると考えます。芸術指向の作品を否定まではしませんが、サブカルチャーを否定するのもまた筋違いといもの。大衆が支持した作品を低俗なものと決めつける態度はいかがなものでしょうか。そうしたお芸術作品や興行的にはパッとしなかった作品を好きな人がよく用いたがる、「観客を選ぶ映画」なんて私の大嫌いな言葉です。そういう映画に“選ばれた”試しがありません(笑)。興行成績の可否が作品の良し悪しを決めるなどと言うつもりはありませんが、ことさらにマイナー作品ばかりを持ち上げ、妙な選民思想をひけらかされるのにはうんざりというものです。
好き嫌いの傾向は人それぞれですので、ハリウッド映画を観たくない人にあれも観ろこれも観ろと無理にお薦めはしませんが、ごく一部の作品を観ただけでひと括りに語るのは愚かしいことです。ハリウッド映画を貶めることで、相対的に邦画やヨーロッパ映画の価値が上がるというものでもありません。私はいたって下世話な人間ですので、これまでに観て来た作品にはハリウッド映画の占める割合いが高く、好きな作品も多いです。けれど邦画にもヨーロッパ映画にもハリウッド以外のアメリカ映画にも、好きな作品はいくらでもあります。「どこで作られたか」を前提に、先入観を持って観てしまうのはもったいないことですね。 |
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